KR-13、密室ゲームはどこまで続くか

killing room見た。邦題は実験室KR-13
この類はやはりesというのがあり、もう一方にはcube,sawがある。心理面重視とギミック重視ないし内部重視と外部重視の極があるといえるかもしれない。
KRの注目するべき設定はまず主人公ライリーが一番内側にいない点だ。一番内側の密室にいない。これはたぶん新しい。(esもそうといえるかもしれないが、esはそもそもだまし討ち的にゲームが開始されるわけではないから別に考えるべきだろう)彼女はこの実験をしている組織に呼ばれ、そこに迎えられるかどうかの敷居に立っている。彼女は一番内側の最も厳重にロックされた密室にいるわけではないが、この組織で行われていることを知ってしまった以上やすやすと離脱できないだろうということだ。まあそれなりに閉じ込められているということだ。
そしてこの組織はcia直属というわけでもないが関連した公的機関でその施設は人員も十分いてよく管理されているようだ。また主人公が一番内側にいるわけではないからさまざまな情報が視聴者に提示される。実験はかなり反復して行われており手馴れているらしいことも示される。このことから少なくとも密室内部の人たちは独力で逃げることはかなり困難だろうことが感じられる。これは外側が初めから提示されているという構造からもあきらかだ。もし内部から密室の壁を突き破れるものがいれば、それはスーパーヒーローだ。もちろんこの映画ではスーパーヒーローの存在はルール違反だ。
映画の序盤では主人公が実験のビデオを見ている状態だ。ゆえに映し出されるのは完全なる無駄骨折りだ。そのあと主人公側と密室内部がリアルタイムにつながることになる。こうなると主人公の行動がなにかこの組織にひびを入れるのではないかという期待が出てくる。これはスクリーンにも明らかに示される。
そしてついには主人公は密室内部と交わる。彼女は扉をやや開けるが、鼻先で閉ざしてしまう。彼女はついにヒーローにはならない。彼女は組織に歓迎される。ゆえに実験は続く。

感想。一番狭い密室内部に主人公がいない。それはたぶん新しい。だがそれは同時に密室という設定のテンションを下げる。cubeは作を重ねるごとに外側を開示していき、作品の良さを失った。ではこの密室のテンションの代わりにKRが得たものがあったのか。おそらくあった。一つは主人公がすべてを決めるという点。そしてより重要なのは、キリングルームのような明らかな密室は明らかに恐ろしい、だがそのひとつ外側にも鍵はしまっていないがより隠微なそして悪質な閉鎖空間があるということが示されていることだ。この映画では主人公は結局そこから離脱できない。こういう話は正直大好物だ。たとえばホステルは構図としてはこれに似てた。しかし主人公はヒーローとなり離脱した。一番内側にいた人も一緒に。(まあ結局死んじゃうけど)ホステルはカタルシスを一度提示し、少し中折れさせる。(これはホステル2との関係では1の主人公が早々に殺されて、中折れさせている。カタルシスのやや中折れがホステルシリーズを貫徹するルールな気がする。)
KRの話に戻ると、しかしこの構造を発動させている物語内の動機が非常に怪しい。この組織はこの実験を通じて人間兵器を作るというがこれでそんなことができるのかという点がまず気になる。ライリーが劇中で言うようにもっとエフィシエントなウェイがイグジストするやろーと思います。まあこの点はライリーさん優秀なようなので、彼女に実験の改良を期待するということにしましょう。
密室状況の発動因を明らかにするのであればもっと強いものにするべきだった。現実の世界と地続きに思わせるならばここはこだわらねばならぬ。(でもこれは2でライリーの実験改良フラグであると好意的に解釈しよう)
それとドクターフィリップスをもっといやらしくしてほしかった。(しかしこれも好意的に解釈すると、公的機関にふさわしい態度と言えるかもしれない。かれは単なる官僚であり特別な存在ではない。彼が強烈な存在であればライリーとの関係がより緊張したものになるだろうが、するとライリーは離脱するかもしれない。離脱してしまわないことにこそこの映画の眼目があるのだからよいのだ。ゆえに2ができるのだ。やったね。)

この映画は設定がちょっとおかしいし、カタルシスもありません。扉は目の前で閉められます。でも密室系が好きであればそれなりに楽しいですよ。それに時間も大体90分くらいで短いし、というくらいのテンションでおすすめできるかな。まあまあそれなりにおすすめですね。